この恋は、風邪みたいなものでして。
こそこそとポケットに入れたセットアップ写真を参考にスープやサラダを並べていく。
うちの朝のルームサービスで一番力を入れているのは五種類の天然フルーツジャムだ。ブルーベリー、ストロベリー、マーマレード、ハニーミルク、ガナッシュクリーム。
全て小さな瓶に入っていて食べきりサイズだし、食べれなくても持って帰って貰える。それでリピーターになってくださるお客様もいる。
それをきちんとラベルが見える様に並べれば、かなり豪華で見栄えも良い。
意外と、本人が居ないお陰もあって大分ドキドキも収まってきたし、メイキングも上手に出来たような気がする。
後は本人がソファに座ったら珈琲を入れて出来上がり。
シャワーの音がまだ此方に響いてくるのでもう少し時間が掛かるかな。
颯真さんを待つのに手持無沙汰でついつい内装を見てしまう。
実はずっと入ってみたかった。最初のルームサービスの時も入れるか持ってドキドキしてたもんね。
中央の柱に大きな水槽が埋め込まれていて、小さな水族館の様――との謳い文句の柱には、空の水槽があるだけだった。
中身が入っていないのは寂しいけど、どうしたのかな?
残念さはあるものの、家具や朝食を食べるテーブルから見える景色は絶景だ。
水槽が無かったにしても、やはりここは最上階だけある。
しかも一週間も滞在されているというのに、清潔なのは颯真さんらしい。
寝室の扉が開いていたけれど、向こうには付けっぱなしのパソコンが見える。
本当に徹夜で小説を書いていたのかもしれない。