この恋は、風邪みたいなものでして。
「ごめんね。シャワー浴びながらちょっとうたた寝しそうだった」
髪を拭きながらバスルームから現れた颯真さんが、前髪を完全に下ろされ幼い感じでもうもう、鼻血が出そうなぐらい素敵で慌てて背を向けた。
「こ、珈琲を入れますね」
「ありがとう」
ソファに座った颯真さんから、シャンプーの良い香りが漂ってくる。
部屋着用なのか、大きく首元が開いたセーターから、濡れた鎖骨がちらちら見えて、心臓が口から飛び出しそうだった。
「ふ、珈琲も二人分注いだ方がいいですか?」
「いらない。もうすぐ打ち合わせに担当が来るだけだから」
長い指先が私の方に差し出され、その手に珈琲を渡すと目を閉じて匂いを嗅いでいる。
その姿さえ、絵画から飛び出した様な色気だ。芸術作品みたい。
「担当さんも朝早くから来られるんですね」
「ん。昨日、散々電話で一緒に徹夜してもらったから、良いモノを食べてもらおうかなって」
「優しいですね。てっきり二人前食べられるのかと思いましたよ」
「あはは、俺、そんなに大食いに見える?」