この恋は、風邪みたいなものでして。
私のお馬鹿な発言にも笑って答えてくれる辺り、やっぱり心が広いんだろうな。
「あれ、俺、携帯どこだろ」
珈琲を飲みながら、彼が目で辺りを探しだした。
でも、私がちょっと回りを探索していた時、携帯なんて見ていなかったような。
「バスルームですか? 見て来ますね」
「ありがとう」
座っている颯真さんにそう伝えてバスルームに入ると、きちんと畳んでいるズボンの上に携帯が置かれていた。
緑色に光が点滅しているからメッセージを受信しているようだった。
「ありましたよー」
画面を見ないように裏にして持ち上げると、洗面台の上にピンク色の眼鏡ケースが置いているのが見えた。
ピンクに花柄の、上品なブランドのケースだ。
「ありがとう。担当もう来るかな」
私の気持ちにも気づかず、彼はメッセージを確認し出した。
女の人の眼鏡ケース。いや、もしかしたらサングラスを入れるのかもしれない。
そう思うと、私の頭の中に浮かぶのはやっぱり茜さんだった。