この恋は、風邪みたいなものでして。


「でも、私には優しいし、助けてくれたし、私は自分が見た颯真さんが颯真さんです! 他の人の話に耳を傾けたくない――」

もやもやした気持ちを見透かされそうで、嫌だ。
自分のこんなに人に左右される気持ちが大嫌いだ。


「でもさ、わかば」

ドアノブを握り締める私の手を、彼が強引に握って、私はドアへ追い込まれる。

「もう少し君も、俺を警戒しべきだよ」

彼の影に飲み込まれて身動きが出来ない。

じりじりと近づいてくる颯真さんの目が笑っていない。
優しい雰囲気なのに、口元は微笑んでいるのに。
瞳が、私を捉えて離さない。

「残念ながら、俺は皆が言っている様に悪い男かもしれない。今も何も知らないわかばの隣で聖人のように笑ってるし」

「颯真さん」

顔が近づいてくる。
唇が触れそうで触れないほど近づかれて、顔を背けたら顎を強引に掴まれた。

彼の瞳から逸らせない。



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