この恋は、風邪みたいなものでして。
「知らなすぎる君に手を出すのは、すごく悪い気分になるんだ」
「知らなさすぎる?」
もう颯真さんが何を言っているのか分らないぐらい、私の頭は沸騰してる。
手を掴まれた力強さ、
強引な指先、
優しいのに逸らせない真っ直ぐな瞳。
いつも隣で笑ってくれている颯真さんでも、
柾から助けてくれた颯真さんでもない。
私の知らない颯真さんだ。
「このまま、俺の雰囲気に呑まれて、キスをしてもいいの?」
顎を掴んで居た親指が、私の唇を拭う。
「俺はしたいからするけど――いい?」
その言葉と共に、ドアに押し付けられる身体。
憧れたと思っていたけど、こんな風に、私の気持ちを聞かないまま身体を触れ合うのは、違う。
私が欲しいのは、それじゃない。
「や、です」
首をブンブンと振ると、手を掴んでいた力がふっと緩んだ。