この恋は、風邪みたいなものでして。

「頂きます」

ココアを頂いて、こくんと一口飲むと甘くて何だかほっとした。
白昼夢の後だと思ったら、尚更。

「やっぱ優しさが伝わらない男は良い男なんだよね。うんうん」
「それって柾のことですか」
「勿論。あーあ。せっかく会社が近いのに休憩時間が合わないって切ないよね」

ランチタイムが一番忙しいレストランで、先ず時間が合うとは思えない。
「もしかして笹谷君って華寺さんの就職先の近くに就職決めてたりして。愛され過ぎ」
「いえ、柾の商社はすっごい倍率でしたしそんな理由で受けないですよ」
それよりも、こんなに忙しかったのに菊池さんが野菜サラダにお茶だけの方が倒れてしまいそうで心配だ。
今日の賄いは、ローストチキンのサンドイッチが大皿に乗っているのにラップを取ろうともしない。

「それだけですか?」
「うん。今日は笹谷君と二対二で飲みだから」
「ええええっ」

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