この恋は、風邪みたいなものでして。
「うっせーな。死にそうな顔のお前を一人にしたまま酒飲んでも気になるっての」
「でも、柾は動物嫌いじゃん」
「俺は嫌いじゃない。ヤスが俺を嫌ってた」
「……ヤス君に意地悪してなかったっけ」
「引っ掻かれたり猫パンチされてたのは俺の方だろ」
「……そうだった?」
確かに言われてみればヤス君は、柾が私をいじめる度に飛びかかっていたし、中学ぐらいからは窓から見えるだけで威嚇していた。
「ライバルと思われてたんだろうな」
「ヤス君と柾の初対面って、柾が私の髪の毛をめちゃくちゃにした発表会の日だよ。私をいじめたから警戒されてたのかもよ」
「……ああ、それな」
飲んだ珈琲を二つ、ゴミ箱に捨てる。
そのまま一緒にカフェから出て来てしまった流れで、どうやら本当に柾は付いてくるらしい。
ヤス君の時は、容態さえ聞いてこなかったのに。