この恋は、風邪みたいなものでして。
それどころか、店長をもう親に会わせているのかもしれない、
だったらこの恋は、処方箋もなく溢れる気持ちが止まらず悪化していく。
伝えることも、勇気もなく。
嘘をついて嫌われるしかない。
「だけどあいつも、お前に本当の自分を見せてねーよ」
「え」
「気になるなら、自分で調べるか聞いてみればいいだろ」
「それ、店長も言ってた」
呆然としてそう言うと、柾は辺りをきょろきょろ見渡しだす。
「何?」
「何か、この馬鹿頭を殴っても良い様なモノが転がってないかなと思ってな」
「ひい」
頭を押さえると、柾はその頭をポンポン叩く。
「お前は恋愛経験は?」
「ない」
「お前に他の女より魅力的な部分は?」
「……ない」
「じゃあ、お前がその小説家野郎を振り向かせるのは無理だ」
「……」
現実を突きつけられたら、胸が抉られるように痛い。
「諦めずに、突進しなければ、だけどな」
またポンポンと叩く。
付き離して冷たい言葉を言うのは、甘ったれた私に優しく現実を教えてくれているからだ。
それに今気づいた私は、遅すぎた。
こんなに優しい人がずっと隣に居たのに、私は気づかない鈍感野郎でした。
もう、後悔はしたくない。
そう思った時、携帯が鳴った。