この恋は、風邪みたいなものでして。


「颯真さんに会わなくては、悪化してしまう風邪みたいです」

このまま会わないまま心肺停止してしまいたいぐらい、もう後戻りはできない。

『それは今すぐ会わなくては。どんなに離れている場所でもすぐに駆け付けるよ。今、何処に居るの?』

うう。優しすぎる。
期待してしまうからそんな言葉、本当は止めて欲しい。
頭の中で、何度も颯真さんの言葉を反芻していたら、柾が携帯を奪った。

「子猫の動物病院の前で―す」
「ちょっと!」
『――へえ。彼と一緒なんだ』

ひいい。一瞬で颯真さんの声が低くなる。
そうだよね。柾から守って貰った筈なのに、その対象と一緒にいるなんておかしいよね。

「じゃ、帰る」
「柾の馬鹿!」
バスに飛び乗って逃げた柾に叫ぶ。
自分だけさっさと逃げたな。

『わかば』
「はい」
恐る恐る電話を取ると、彼から仕方がないと言わんばかりの溜息が聞こえてきた。

『もう車に乗ったから。良い子で待ってなさい。話はそれからだ』

ああ。そんな低くてセクシーな声も好き。

「分かりました。ずっと待ってます」

ほっこりして嬉しいのに、店長や茜さんの顔が浮かぶと、途端に胸が切なくなった。

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