この恋は、風邪みたいなものでして。

颯真さんを待つ間、子猫の様子を見に行った。
面会時間はもうあと30分ぐらいしかなくて、本当に自分のことしか考えていない自分が恥ずかしくなる。

保育器に入れられた子猫は、うとうとと船を漕いでいてぷくぷく声を漏らすのが可愛かった。

「この子、男の子だね」

「え、あ、先生!」

ヤス君の主治医だった大和先生がマスクを外しながら、やってきた。
10年以上ヤス君を見てくれているのに、目尻に皺もできないし髪も真っ黒艶艶で、年齢不詳の大和先生は子猫のカルテを見た。
奥で最後の患者さんを看ていたのかな。
奥ではカルテを作っている看護師さんと、ゴールデンレトリバーと飼い主さんがまだ見える。

「まだ生まれて三週間ぐらいかな。ヤス君の生まれ変わりというタイミングではないみたいだ。残念だけど」

保育器の子猫を先生は撫でると、子猫は手足をこちょこちょ動かした。

可愛くてつい笑ってしまう。

「残念じゃないですよ。ヤス君の変わりなんて探してません」

「でもこの子、御手洗君と一緒に飼うんじゃないの?」

先生が、えええっとわざとらしく驚いて、子猫と私を交互で見る。

「颯真さんがお迎えしてくれるとは言いましたが、私は関係ないですよ」

「でも婚約してるんでしょ? 昨日、御手洗君からそう聞いたけど」
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