この恋は、風邪みたいなものでして。
「そ! それは、嘘みたいな」
「嘘じゃないですよ」
うわ。
タイミング悪く、颯真さんが丁度玄関の方に現れた。
本当に急いで来たのか、上着も羽織っていないし、息も荒い。
「颯真さん」
「あはは。そうだよねー。でもびっくりしたよ、17年越しの」
「先生、子猫の様子はどうですか?」
話を慌てて遮った颯真さんに、大和先生は何か察して笑いながら指先で子猫をあやした。
「ミルクの飲みも良いし、順調だよ。栄養失調だったのは、母親と離れてから何も口にしてなかったからだろうね。あと一日でも遅かったら危なかっただろうけど」
「そうですか。それは良かったです。あと何日ぐらいで退院できます?」
「三日、かな。でも子猫なんて素人が面倒見れないでしょ? 二週間、病院で看てあげてもいいよ」
二週間。
その方が子猫にはきっと良いだろうけど、保険にも入っていない子猫が二週間。
入院費いくらだろう。
そんな下世話な考えが過ったけれど颯真さんは即答だった。
「分った。お願いします。それまでに決着付けて新居でも契約しときます」
「新居!?」
「そうしなさい。ころころ環境変えたら子猫のストレスになるからね」