この恋は、風邪みたいなものでして。
「初めて会った時も、二度目も私の気持ちを汲み取ろうとしてくれて、好きになりました。でも好きになればなるほど、颯真さんは遠い人でした。きっと私みたいな人は、同情してもらって嘘の婚約者としてしか隣にいられないような、雲の上の人」
自分で言っていて、じわりと涙が込み上げてきた。
あまりに現実はかけ離れている。
「本当は、ヤス君はペットなんです。ロシアンブルーの猫です。初恋のお兄さんから頂いた猫で17年間一緒に過ごした、家族の様な存在でした」
一週間泣いて過ごしたのは、隣にいて当たり前だと思っていた存在が、ぬくもりが消えた喪失感。
大好きだったのに、私はヤス君を幸せに出来たのだろうかと言う不安。
起きたらベットで一緒に眠っているかもしれないと起きて、ヤス君が居ないことを実感して泣く情緒不安定さ。
幼馴染の柾ですら呆れた私の弱さが浮き彫りになっていた。
「恋人を亡くした可哀相な私だから親切にしてくださったですよね。でも私の中ではヤス君は、家族だから、だから、猫だって意識が持てなくて。嘘を付く形になってしまってすいません!」
勢い余って自分の太股に頭をぶつけてしまいながら謝った。