この恋は、風邪みたいなものでして。
結局私は、今日はずっと裏方で食糧の点検や仕入れの確認、電話などの事務に回してもらった。
接客業にしては本当に酷い顔をしていて、とてもじゃないが人の前には出られない。
自分の要領や仕事のでき無さに、また泣きだしそうだった。
涙線が崩壊している。
それでもなんとか、定時までは邪魔にならないように雑務をこなし終えた。
「もう大丈夫?」
「菊池さん」
ロッカールームで着替え終わった菊池さんが私の顔を覗きこんだ。
「ごめんなさい。嘘、吐いてしまって」
「あはは、いいのいいの。言いにくいことよね。でも華寺さんのヤス君好きは従業員の間でも有名だったから正直に言えば良かったのに。一時期具合が悪い時も、朝番で早めに帰らせてもらってたじゃない」
肩をパンパン叩かれて、私は申し訳ないので引きつらせた笑顔を浮かべてしまう。
「幼馴染が、『猫なんかの為に仕事休むなんて首になる』ってすっごく怒って怖くて」
「え、あの強面の笹谷君!?」
菊池さんが信じられないといった顔で驚く。