この恋は、風邪みたいなものでして。


豆粒を食らった鳩とでも言うのが正解なのか、颯真さんがどう反応して良いのか分らない様子で目尻を押さえた。

それは、店長を守りたい一心で何か言い訳を考えているポーズなのだろうか。

「あーあ。どう風邪をこじらせたらそんな結論になるんだ」

「だって! 店長は颯真さんのこと良く知ってたし、それに茜さんが言ってたし!」

「お嬢さん、その方はホテル『オーベルジュ』内にあるレストラン『ブロン・ロネリ』の店長のことですか?」

バーテンダーさんは持って来るや否やまた噴き出した。

「そうです。綺麗ですし、仕事も出来ますし、私と違ってテキパキしてて格好良いですし、はっきり言って憧れます!」

「そうですか。それはそれは私の娘を誉めて頂き嬉しい限りです」

「娘……さん?」

この優しそうな年配のバーテンダーさんが、店長のお父さん?



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