この恋は、風邪みたいなものでして。
エレベーターから逃げる様に走りだそうとした私を、颯真さんは予想していたのかやすやすと捕まえた。
そのまま、ロータリーのタクシー乗り場まで私を連れていく。
そうだった。最初の時も私がタクシーに行き先を告げなくてもタクシーは家まで行った。
つまり最初から彼は私の住所を知っていたってことだ。
次々と、見逃していた空欄部分のピースが嵌っていく。
「じゃあ、明日。出勤は遅番かな?」
「なっなんで分るんですか」
二日続けて早番だった私が次は遅番なのを、言い当てるなんて。
やはり店長と仲がいいから?
「それもまた明日、判明しちゃうから」
クスクス笑う彼は、幸せが零れて伝わってくる。
あの唇とキスしたのだと思うと、また真っ赤になった。