この恋は、風邪みたいなものでして。

「何?」
「ヤスのお墓。やっぱり霊園に眠らせるより、ずっと走りまわった庭に埋めてあげたいじゃない。49日過ぎたら、庭にお墓作ってあげようと思ってね。これ、カタログなの。颯真くんとどれがいいか見ておいて」

そんな大事なパンフレットをどうして四つ折りにしてるのだと、のんびりな母に文句を言いたい。
けど、折り目を伸ばしながら、ちょっとだけ胸が締め付けられる。

「どうして颯真さんと?」

「ふふふ。何を言ってるんだか」

嬉しそうな母の顔に、聞くに聞けない。

でも少しだけ、もしかしてと胸が騒ぐのは――颯真さんがヤス君と関わりがあるのだとしたら、あの人なのではないかって思ってしまう事だ。



でも、だったら何故私は、彼と颯真さんを結び付けられないんだろう。

「行ってきます」
「遅くなるなら、颯真君なら連絡しなくても大丈夫だからね」
「行ってきます!」

にやにやする母には、きっと殆どお見通しなんだろうなと思うと、胸が騒いだ。

< 172 / 227 >

この作品をシェア

pagetop