この恋は、風邪みたいなものでして。
『今いそがしいの』
『こら、わかば』
やっぱりヤス君を返してって言われたら怖かった。
お兄さんみたいにヤス君が居なくなると思って怖かった。
いつしか私は全力で、ヤス君を譲って下さった、颯真さんのご両親からの連絡から逃げ、颯真さんの事も、思い出の中で形を変えてしまっていた。
懐かしいと心は分っていて、何度かもしやって思う事は何回もあったのに。
それなのに、私は自分の気持ちに目隠ししていった。
短くて、小さな子供でも弾き追われる童謡。
そんな短い曲の中で、私が見ないふりしていた思い出達が溢れて、音を立てて主張し出す。