この恋は、風邪みたいなものでして。
症状七、免疫力をつけましょう。
店長に引っ張られて出勤できたものの、私の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
気合いを入れて着てきた服も、ヒールも、テーブルの下に潜った時に汚れてしまていた。が、一番にメイクを直すように店長に指示された。
幸せそうな電話をしていた菊池さんも心配して休憩室を何度も覗きに来てくれた。
私が菊池さんの幸せな話を聞くはずが、今、私も幸せで一杯で、誰かを抱き締めたい気分だ。
「そう言えば、店長に最初に研修で習ったことは、お化粧でしたよね。私のアイメイクはパンダみたいとか、流行ってるメイクではなく接客するメイクって」
漸く人前に出れる程度に回復した顔を見て店長も、胸を撫で下ろした。
「そうね。貴方は素直で、飲み込みは悪くても努力しようって前向きな姿勢で、教える私は嬉しかったわ」
「それなのに、私、昨日の店長の言葉から、勝手に店長が颯真さんの婚約者なのかと勘違いしちゃって」
「私が? 嫌だ。止めて。本当に止めて」
店長は真っ青になった後、舌を出し本当に嫌そうに首を振る。