この恋は、風邪みたいなものでして。
ロビーの受付の方々や案内の人達にじろりと睨まれながらもそそくさとエレベーターに乗り込んだ。
最上階。
パンフレットでは見たことあるけど行くのは初めてた。
ルームサービスで上の階へ持っていくのは先輩方の仕事だし、主に店長自ら伺う様な地位ある方ばかり宿泊される。
しかもペントハウスは、有名なアクアクリエイターの方がデザインしていて、水族館をテーマにした部屋だ。
部屋の中央の柱に大きな水槽とクラゲがライトアップして部屋を海の中へ誘うとか。
中に入ってみたいけどと浮かれそうになった。
慌てて自分の両頬を抓る。
謝罪なのに、自分のこのミーハーさに自分で呆れてしまった。
「よし!」
大きく深呼吸して、最上階の廊下へと足を踏み入れる。
奥にあるドアは真っ白。廊下は既に海をデザインしてか青色の絨毯だ。
ブザーを押して、中の返事を待つ。
「……」
返事がない。