この恋は、風邪みたいなものでして。

先生が私の表情を見て、おろおろして心配してくれている。
それなのに、私は大丈夫ですよ、と安心させることも出来ず頷く。

「この子、白と黒のぶちで牛みたいって私が言ったから『モー』って名前にするって言うんです!」

「あら、安易な名前ね」

「そりゃあ、颯真さんは私を選ぶぐらいだから、もしかしてセンスが無いのかもしれないけどって言ったら、『俺が選んだ女性の事を悪く言うな』って」
「……のろけてるの? 馬じゃなくて牛に蹴られちゃう?」

先生がぽかんと口を開けたので、ブンブン首を振る。

「私は、オーベルジュみたいに素敵な名前が良いんです! 二人の愛の結晶って意味で『らぶ』とか。でも、颯真さんを目の間にすると、ドキドキしちゃってちゃんと自分の意見を言えないと言うか」

「とっとと子猫ちゃん連れて帰りな。お代は御手洗様宛につけとくから」

こっちは真剣に悩んでいるのに、先生は私を子猫ごと追い出すと、急患に備えて仮眠室へ向かってしまった。

「先生の馬鹿―」


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