この恋は、風邪みたいなものでして。

「寝室に、指輪を用意してるよ。君が良いなら――ご飯よりも先に返事を貰ってもいい?」

寝室に――。
その言葉に、後ろから抱きしめていた腕の力が強くなった気がする。
抵抗しても離さないって意思表示みたいだ。


もちろん、離れる気なんて一ミリもないけれど。


一生のうちで一番、心臓が高鳴っているのが分かる。
怖いとか不安な気持ちが全くないわけではないけれど、それ以上に嬉しくて高鳴っている。

颯真さんを好きになって、今日までずっと大切にしてもらっていた。

子供の名前まで考えてくれている様な人だ。
私の為に17年も思ってくれていた人。


「宜しくお願いします。私も、ずっと一緒に居たいです」

この温もりにずっと包まれていたい。

仕事が忙しくても、同じ家で帰りを待ちたい。

これ以上は私ももう待てない。

「お嫁さんにして下さい」

私の震える声の返事は、後ろから荒らしく首に口づけで返された。




< 212 / 227 >

この作品をシェア

pagetop