この恋は、風邪みたいなものでして。
それが終わって、午後から出勤。
仕事は結婚後も続けていく予定だと伝えたけれど、結婚式準備で抜けることも多く、今の時期はちょっとだけきつかった。
休憩室へ入るや否や、他のスタッフさん達が歓声を上げていた。
「菊池さんおめでとうございますーっ」
「すっげ、一流商社マンっすか」
「毎日、菊池さんのこと送って下さってるあのイケメンですよね」
左手の薬指に光る指輪を見せながら、菊池さんが真っ赤な顔で頷いている。
「わ、ついに! おめでとうございますっ」
「わかばちゃん、ありがとうー」
菊池さんが飛んできて、首に抱きついてきた。
菊池さんと柾も、私と颯真さんが婚約したあの日に付き合ったらしいから交際6カ月でプロポーズかあ。
柾って意外とこーゆうのはスマートなんだなあ。
颯真さんと暮らしだして、結婚式の準備にばたばたしててここ数カ月そう言えば顔を見ていない。
でも菊池さんがこんなに幸せなんだから、きっと幸せなんだろうな。
「私たちも、オーベルジュで式を挙げたいから、色々と教えてね、わかば先輩!」
「やっ 滅相もないです! 私なんてっ」
それでも私の言葉なんて耳にも入らないぐらい幸せなのか、着替えもしないまま、店長に報告しに飛び出して行った。