この恋は、風邪みたいなものでして。
3カ月も、あっという間に過ぎた。
ホテルの下には、ブライダル雑誌の取材も来ているらしく小さく写真も載るらしい。
ばたばたと急ぎ足で決まった結婚式だったけれど、なんとか今日の日までこれた。
空は晴天。
雲さえも吹き飛ばすような真っ青な空だった。
先ほど、空を色とりどりの風船が飛んでいくのが見えた。
ベールを下ろし、静かに鏡に映った自分を見つめる。
颯真さんと風君は新郎の着替え室に居る為にまだ会えないのが余計に緊張してしまう。着替えに別れてあった数時間なのに既に寂しいと思う。
飲み物でも飲もうとしたら、手が震えているので諦めた所で、扉をノックされた。
「わかばちゃん」
「お、ほらみろ、やっぱ緊張してるだろ」
「鏡花さん、柾」
「結婚おめでとうございますっ」
二人が、緊張しているだろう私の為に差し入れを持って来てくれたみたい。
猫のぬいぐるみが新郎新婦の姿をしている。
よく見ると、私の今日着ているウエディングドレスと一緒だった。
「わあ、可愛い。ありがとうございます! 受付に飾って貰っちゃおう」
「緊張してるなら、飾らず持っててもいいよ」
「お前みたいな庶民が緊張しないわけないんだから、諦めろ」
天使みたいな鏡花さんと、意地悪しか言わない悪魔のような柾の雰囲気に確かに緊張は和らげた。
「……俺の結婚式も、御手洗夫婦で来いよ」
「うん。絶対に行くね」
柾とこんな風に会話ができるようになったのも、お互いが満たされたからだし、こんな柾を全部受け止める鏡花さんのおかげなんだろうなって思う。
二人のお陰で、今度は飲み物を持っても震えることは無かった。