この恋は、風邪みたいなものでして。
「ちょっと待て。お前、本当に猫に依存しすぎてたんだな」
「猫じゃなくてヤス君」
一歩も譲れない私は、柾を睨みつける。
すると、柾の眉間が更に深くなった。
「もうヤスは居ないんだから、俺がお前を守ってやるって言ってんだ。怖がるんじゃねーよ」
「結構です! 信じられない」
「いつまでも死んだヤスのことで泣くな。さっさと忘れて俺と付き合え!」
「死んだなんて簡単に言わないで! 意味分からない!」
「お前は俺の事を全然見てねーって言ってるんだよ! ヤスなんかと比べるな!」
『ヤスなんか』
『ヤスはもう居ない』
『さっさと忘れろ』
『たかが猫』
幼馴染なら私がヤス君と朝から寝る時までずっと一緒だったことを知ってて、どうしてこんな酷い言葉を吐けるんだろう。
見たくない。
ヤスを否定する柾なんて見たくない。
悔しくて悲しくて、我慢していた涙が一つ、零れ落ちた。
「此処にいたのか、わかば」