この恋は、風邪みたいなものでして。
症状二、判断力低下。
次の日。
ホテルのロビーからして別世界になっていた。

何でも飾りきれない量の花が送られて来たらしい。仕方なく会場に展示出来なかった花をロビーに飾っているとか。
今日は有名な小説大賞の授賞式が行われるので、従業員は朝から目が回る急がしさだとか。
でもうちのレストランは逆に、今日は中央のグランドピアノが無くなり、お役様も少なかった。

「じゃーん。華寺さんも買った?」

休憩室で菊池さんがカバンから取り出したのはハードカバーの小説だった。
『処方箋』とタイトルが書かれた作品に、今日の小説大賞受賞と書かれた帯がついている。

「それ、菊池さんどうされたんですか」

「今日、もしチャンスがあればサイン貰う為よう! でも試しに読んでみたらすごいの。もう涙が止まらない。このシリーズがねえ」

説明しながらテーブルにどんどん本を並べていく。
『媚薬』『免疫力』『包帯』『琴線』と並べられていく本は、辞書並に重そうで太い。

「華寺さんも少女漫画好きッて言ってたから絶対にきゅんってなるよ。読んでみて」

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