この恋は、風邪みたいなものでして。
此処の授賞式が終わったら、一時間ほど片づけをして帰ることになっている。
「何時?」
「21時は過ぎます」
下手したらもっとかかる。
「じゃあ、待ってる。10階のBARで飲みなおそう」
「ええっ」
仕事が終わっても颯真さんに会えるなんて、嬉しい。
でも、
「従業員は、ホテル内の施設の利用は原則禁止なんです」
残念。
10階のBARは、夜景が綺麗だから颯真さんと二人で飲めたら最高だったのに。
「そっか。じゃあ、終わったら――俺の部屋においでよ」
「ええええ!」
更に大きな声が出てしまい、慌てて口を抑えた。
仕事中なのに情けない。
颯真さんも私の動揺っぷりに口元を隠してちょっと笑ってる。
「そーゆう反応って、ちょっと新鮮でいいよね」
「私は良くないですっ」
お腹を抑えて、くくっと声を漏らして笑いだした。
ちょっと馬鹿にされてる気もしてきたぞ。
「客室に、もう一部屋あるしなんなら泊まっても良いんだから、おいで」