この恋は、風邪みたいなものでして。

「ねえ、笹谷くんが急にこんな積極的になったのって、今日の小説家の御手洗さんと関係あるの?」
「ええ?」
「二人で話してたよね? 見ちゃった。いや、イケメンだから目で彼を追ってたらね、視線の先が華寺さんだったの」
「あ、あはは」
「今度、飲みながら教えて貰おーっと」
笑顔でそう言いながら、私に鍵を渡して振り返らずスタッフルームへ帰って行く。

どうしよう。菊池さんが始終格好良いって言ってたのに、知らないふりしてた人みたいに思われたかな?
嫌な人に見られたらどうしよう。
たださえヤス君のことで嘘を吐いていたのに。

店長を一人で待つ間、颯真さんに会えるドキドキと、菊池さんを追いかけたい不安で、おろおろしてばっかりだった。

22時を過ぎれば、カフェは閉店だ。

きっと柾も諦めてくれるよね?

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