この恋は、風邪みたいなものでして。


「断言しちゃうって、店長は颯真さんとどんな関係ですか?」
「……ほらやっぱり、貴方全然、彼の事知らないじゃない。彼はね、」

「わかば」

私と店長の後ろから、優しいトーンで名前を呼ばれた。

振り向くと、颯真さんが店長を睨みながら此方へやってくる。
「新人の子をこんな遅くまで働かせて、その上、俺の悪口ですか」

「颯真さん」

「悪口? 貴方がそう言えば、皆そう思うだろうね。外面だけは完璧だし。貴方」

店長がそう言うと、颯真さんは私と店長の間に入って、視界を遮った。

背中から覗いても、店長の表情さえ見えない。

「彼女は俺と約束があるんで、返してもらっていいかな」
「ええ。どうぞ。彼女はとっくに仕事は終わってますので」

なんだか火花が散っている。
ピリピリしてちょっと怖いな。


「お疲れ様。疲れを十分にとるように」

「はい。お疲れ様です」

踵を返す店長に、背中から背伸びして声をかける。
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