この恋は、風邪みたいなものでして。
「こっち」
初めて入るBARは、夜景が一望できるカウンターや席があり、ほぼ満室だった。
服装からみると、今日の授賞式の帰りの方ばかり。
颯真さんは私と二人っきりとか関係者に見られても平気なのかな。
平然と案内してくれているけど。
一番奥、観葉植物で壁が作られたそこに、ベルベットのソファが二つ、夜景を眺められる様に隣同士で置かれている。
間にある硝子のテーブルにはパソコンと眼鏡が置かれている。
「もしかして、お仕事してました?」
「ああ、君が来るまでの時間つぶしに。もう止めてるよ」
閉じたパソコンをカバンへ仕舞うと、メニュー表を見せてくれた。
「お酒は?」
「へへ。意外と強いですよ。顔がすぐ真っ赤になるから飲まないようにしてますが」
酔って記憶を無くしたり、泣きだしたり、絡んだりーーは今のところないかな。
「ぷっ それって強いって言うの?」
口を拳で隠す様に笑った颯真さんが、私と反対側を向き笑いを堪えている。
「本当ですってば。あ、限定メニュー!これにします」
苺のリキュールの、紅茶割と炭酸割り、ミルク割りと三種類のメニューを指差した。
「今、疲れてるから炭酸割りかな」
「お、意外。可愛いからミルク割りにするかと思ってた」