この恋は、風邪みたいなものでして。
――可愛いから。
そんな言葉を平然と言ってのける颯真さんは凄い。
私なんて、茜さんに比べたら可愛い要素なんて見当たらないのに。
「じゃあ、俺はビールで」
「え、意外!」
もっとお洒落な飲み物を飲むかと思ってた。
ワイングラス片手に、足組んでこの席で夜景を見てる颯真さん、余裕で想像できるし。
「えーっと、じゃあこのなんか無駄に長ったらしい名前の」
「無理しなくて良いですから! 好きなの頼んで下さい!」
メニューの高額なシャンパンを指差したので慌ててメニューを奪ってしまった。
意外と颯真さんノリが良い。
思わず二人で顔を見合わせて笑ってしまう。
「意外っていうか、お互いを全く知らないんですよね」
注文したら、サンドイッチも一緒に届いた。
メニューには載ってないのに、お腹が空いているだろう私の為に颯真さんが用意してくれていたらしい。
お酒の力も合わさって、私の頬の赤みはとれそうにない。
グラスを揺らすと、炭酸の泡がしゅわしゅわと上がってくるように、私の気持ちも急上昇だ。
「知らないと駄目ってわけじゃないよね?」
颯真さんもビールを一気に半分飲むと、私を見る。
真っ直ぐ、射抜く様に見る。
「それに俺は結構、君の事知ってたりするし」
「え!?」