この恋は、風邪みたいなものでして。

「そのまま、鈍感な君で居てほしいかな」

のらりくらりした彼との会話。
結局、今日は颯真さんのことは謎の部分が多いままだった。

でも、連絡先は無事にゲットできた。


「で、帰る? 俺の部屋で飲み直す?」
「か、帰ります!」

閉店時間になり追い出されたBARの前で、冗談か分からないことばかり言うんだから。

「じゃあ、タクシー下に呼ぶか」
「……お願いします」

案外あっさりとそう言われると拍子抜けしてしまう。
やっぱりからかっているだけなんだ。


エレベーターで乗り込む際、誰も他には乗っていないのに距離が近い様な気がしてじりじり離れた。

「今日はありがとうございました」

「いいえ。俺も助かったし楽しかったし」

「颯真さんは――」

茜さんとは正式に付き合っていたのだろうか。

聞きたいのに、何故か唇が重くなっていく。
< 64 / 227 >

この作品をシェア

pagetop