この恋は、風邪みたいなものでして。
婚約のふりをしているんだから色々とお互いのワケを聞きだすのは悪いことではないのだけど、聞きたくないのに気になってしまう自分の気持ちが分からない。
急に熱が上がって行くこの気持は、自分では気づかないうちに風邪を引くみたいで。
『ニャーオ』
ん?
颯真さんが受付にタクシーを呼んでくれるように頼んでくれていた時だ。
ロビーで待っていた私は、もやもや考えるのを止めて猫の鳴き声に辺りを見渡す。
それは、ヤス君とは違う若くて赤ちゃんみたいな甘い鳴き声だった。
ホテルに猫が侵入したなんてあるはずないけど、辺りを見渡す。
すると、階段のほうからまた小さい鳴き声が聞こえた。
大変だ。
もしかしてお客様がペット禁止なのに持ち込まれたのかもしれない。
階段の方へかけ出そうとして後ろからふわりと後ろから抱きとめられた。
「危ない」
どうやら意外と飲んでいた私は、足がもつれていたみたい。
しかも転びそうなのにも気づかず走ろうとするなんて。
「って、そそそ颯真さん」
「ぷ。可愛い反応だね。でも走ったら危ないよ」
「すいません」
すぐに離れようとしたけど腰をがっちり支えられてしまった。