この恋は、風邪みたいなものでして。
症状三、急激に体温上昇?
次の日、起きたらとっくに昼を過ぎていた。
ぼーっと起きると、化粧だけはなんとか落として寝ていたらしい。
ヤス君が亡くなってから他に目がいかなくなっていた私にとって、昨日は久しぶりに自分の事で感情が湧きあがった気がする。
部屋を片付けて、仕事で多忙な両親の為にご飯でも作ろうとスーパーに寄って、最後に本屋に寄った。
(きゃあああああ)
駅から近い、三階建てのカフェがある本屋の一階のショーウインドウ。
何冊も飾られていたのは、颯真さんの本だった。
大賞を受賞した颯真さんの本のフェアがあっているらしい。
うきうきとネギを袋から飛び立たせた姿で本屋に入ってフェアのコーナーへ向かう。
凄い。いっぱい彼の本だらけ。
うわー。買っていいかな?
こっそり持ってるだけでもいいよね。
もし茜さんに会って本の内容も知らないのかって言われたら、ぐうの音も出ないし。
――茜さん。
自分で言って、何故か心が重くなる。
昨日、頑なに読ませたくないと言っていた本、噂では好きになる相手が茜さんがモデルだって言われてた奴だった。
やっぱりその本だけは避けて、ハードカバーでは無く持ち歩けるような単行本版を二冊手にとってレジへ向かう。
「わかば」