この恋は、風邪みたいなものでして。
「颯真さんも此処に何しに来たんですか? ホテルからは二駅も離れてますよ」
私の家の駅付近はどちらかと言えば、小さなファッションビルや大型スーパーに三階建ての本屋とかで、女の子向けエリアだと思う。
だからスーツの颯真さんが似合っていない。
「俺はここの本屋に挨拶。フェアをして下さってるって言ってたからサイン本も贈与しときたいなって」
「そうだったんですか。私もフェアの飾り付けに吸い寄せられて色々買っちゃいましたよ。お仕事でしたら私、もう行きますね」
若干、言葉も行動も挙動不審なまま、颯真さんに手を上げて帰ろうとしたら、その手を掴まれた。
「もうちょっと居てよ」
「いや、お仕事ですし」
「ネギをぶら下げてるわかばが可愛いから、――見ていたいんだ」
ぼっと顔に血液が集中してきて、手に持っていたスーパーの袋を背中に隠す。
恥ずかしい。
今日の私、全くいいところがないじゃない!
失態だらけの私は今すぐ穴があるなか全力で隠れたい。