この恋は、風邪みたいなものでして。
そこで私も菊池さんも話の途中だったが持ち場に戻る。
私は泊まっている方が持ってくる朝食チケットの確認。
それを受け取って人数によって席を分けている。
一人の方は奥の席で静かにゆっくり、大人数の方はビュッフェを取りやすい近い席と決まっている。
「わ」
菊池さんが小さく声を漏らす先には、こんな朝早くなのにスーツ姿の颯真さんだった。
「おはようございます。ち、チケットお預かりします」
「あー、はい。おはよう」
欠伸を殺しながら私に笑いかける颯真さんは、こんな時間なのに爽やかで隙が無い。
「すみません、子供の椅子、3個お願いしたいのですが」
「はい、こちらです」
菊池さんが5人家族を案内すると、珈琲片手にオムレツを注文する颯真さんと二人きりになった。
うちのレストランは、オムレツの中身が12種類のメニューから好きに選べる。
彼はチーズとトマトを注文して、あとは珈琲とパンを二個お皿に乗せただけだ。
「今日は早いんですね」
「ん。親に呼び出しくらってね。そういえば小説の受賞だのこっちに帰っているだのキミと婚約予定だの全く説明してなかったなって」
「ぎゃっ」