この恋は、風邪みたいなものでして。
くそう。
絶対に私をからかって遊んでいるんだ。
優しい――は撤回した方がいいかもしれない。
彼は大人っぽい見た目とは裏腹に案外、悪戯は子供みたいだ。
でも。
普通に話せて良かった。
昨日の、自分の打算的で嫌な部分を彼はまだ気づいていないからあんなに優しいだけだけど。
「華寺さん、紙エプロンお願い」
ポンっと肩を叩いて指示をしてきた菊池さんが、私にだけ見える角度で笑いを堪えているのが見えた。
「華寺さんって本当に嘘がつけないね」
颯真さんの方に視線を向けながら、私が誰に憧れているのか瞬時にばれてしまったようだった。
「スイートルームって朝食のルームサービスあるのに、わざわざ降りてきたのって、ふふふふ」
勘ぐるのは止めた方がいい。
彼はきっと部屋に居ても息が詰まるとか、そんな気まぐれな考えかもしれないから。
そう思うけれど、胸のドキドキは収まらない。