この恋は、風邪みたいなものでして。


ニャーオ。

(まただ)

定時の18時から大分過ぎた時間、社員用の通路から外へ出た時だった。
菊池さんからの質問攻めが怖くて帰ったふりをしてずっと隠れていたのだけど、いざ帰ろうとすると、猫の声が聞こえてきた。

まだ小さいだろう猫の声がする。

鳴き声が、この前より元気がないような気がしたのは気のせいなのかな?

駐車場とホテルの壁との間にある出口は、そんなに広くないのだけれど、見渡す限り、猫が隠れそうな場所はない。


仕方なく、駐車場に止めてある車の下を一台一台確認していく。

奥は社員用の駐車場だから、お客様に見つかって不審がられることもない、と願いつつ下を見る。

ニャー…

さっきより鮮明な声が聞こえてきた。

やっぱりこの前の猫の声は気のせいでは無かったんだ。


どこかで抜け出せなくなって困っているのかもしれない。
< 84 / 227 >

この作品をシェア

pagetop