この恋は、風邪みたいなものでして。
鳴き声は聞こえるのに、猫の姿が見えない。
車の下をスマホで照らしても猫の姿が見えないと言う事は、もしかしてボンネットや車のタイヤの上とかに隠れているのかもしれない。
明日も朝番なのに、自分でも猫と言うだけで馬鹿な事をしていると思う。
「この車かな?」
猫の声が聞こえてきたのは、高級車の下から。
少女漫画でしか見たことが無い車に息を飲みつつ、回りをきょろきょろと見渡すし、ヒールを脱いで、中へ身体を突っこんだ。
ヤス君もピアノの下に潜ったらいけないのによく潜っていたなって懐かしく思いながら、中へ入って行く。
初めて入る車の下に、恐怖で身体が震えながらも、猫の為だ。子猫の為。
そう自分に言い聞かせて車の下を照らす。
鳴き声はこの車の下からで間違いない。
今もしている。
なのに、猫の姿は見つからない。
どうしよう。車の下ってどうやって外すんだろう。
光が当たらない奥へ光を当てている時、――急にスマホのライトが消えた。
「えっ あっ わっ」
代わりに鳴りだす。
着信が来たんだ。
液晶画面を自分の方へ向けると、彼からだった。
「も、もしもし」
「やっぱこの足、君か」