この恋は、風邪みたいなものでして。
「おいで、わかば」
彼が取り出したのは、彼の片手ですっぽり収まる様な小さな猫。
白に黒いぶちの牛柄の可愛い子猫だった。
「うわあ。可愛い。可愛い」
「気づかなかったな。早く気づけて良かった。持ってて。確か車にタオル入ってーー」
「わ、私タオルハンカチあります!」
ハンカチを取り出して渡すと、子猫はすっぽりその中に収まった。
「病院に連れていってあげないと。ここら辺でまだ開いている病院ってあるかな」
ハンカチ越しに擦りながら颯真さんが回りを見渡した。
「あの、――私、知ってます。案内できます」
ヤス君が具合が悪かった時に備えて、手帳に細かく書いているし、ヤス君のかかりつけ医も連絡したら対応してくれると思う。
「良かった。じゃあ案内して貰おう。乗って」
彼が助手席を目で示してくれた。
なので私も乗り込もうと歩くと、髪の毛からパラパラと砂が落ちる。
スカートも膝も、汚れたり擦れている。
こんな姿じゃ、こんな高級車に乗れない。