この恋は、風邪みたいなものでして。
「今はね、『飼う』じゃなくて『お迎えする』って言い方が一般的じゃないかな?」
決断出来なかった私の後ろから、両肩を支えた彼がそう看護士さんへ言う。
「お迎え、ねえ。確かにそうねえ」
「俺がお迎えしようと思っています。俺の車の中で見つかったので。宜しくお願いします」
「あら、そう。じゃあ手続きがあるからちょっと待っててね」
看護士さんが奥へ引っ込むと、丁度電話が鳴ってその対応もし出した。
電話で容体を聞きながら書類を用意している。
「忙しそうだね。入院って何日かかるんだろうね」
「颯真さん、そんな簡単に答えて良いんですか?」
「ん?」
颯真さんが私を不思議そうに覗きこむから、色んな感情がどっと溢れて止まらなかった。
「猫って、すっごく隣に寄りそってくれるんです。見ていないようで、一緒に住んでいれば本当の家族の様に思って思われて――でも私たちより短いんですよ、時間は」
ボロボロと涙が溢れて来た。
私は、颯真さんの前で泣くか、真っ赤になるか、汚れて砂まみれになるかで、本当に情けない姿ばかりだった。
でも言いたい。
言いたかった。