この恋は、風邪みたいなものでして。
颯真さんの視線の先は、点滴に繋がれた子猫だった。
ぐったりとしているが、時折プククククと寝息を立てている。
小さく小さく丸まっているけど、懸命に生きている。
「だから、今度は俺が飼いたい。あの時の思い分、大切にする」
「……ごめんなさい。私、失礼な言葉ばかり投げちゃって」
「君らしくて、逆に益々好きになったよ」
「す!?」
「子猫の名前、二人で考えようね」
私を振り回す甘い笑顔で彼は子猫と私を交互に見た。
彼はとても優しい。
その優しさは一体どの感情から滲ませてくれているんだろう。
「では、こちらにサインと住所と、あと身分証の提示も――」
電話が終わり、看護師さんが書類を何枚か持って来た。
ついでに子猫の診察カードも作るようだ。
「あ、私、家に遅くなるって電話しなきゃ」
気づいたら、いつもならばとっくに帰っている時間だ。
連絡いれないと夕飯も片づけられてしまう。
「車の鍵、俺のスーツのポケットから出していいよ」
「すいません、お借りします」
ポケットからキーケースを取り出すと、駐車場へ向かった。