この恋は、風邪みたいなものでして。


一目で分かる彼の車のロックを外す。

助手席のカバンを取りだし、ついでに床に落ちた砂を払っていた時だった。


キラキラと助手席の足元に何かが光った。

摘まんで持ち上げて見ると、音符の形のピアスだった。
丸い部分に赤いルビーが埋め込まれている。

音符の形のピアスを助手席で落とす人物なんて一人しか浮かばない。
これって。
摘まんでしまった以上、颯真さんに言わないわけにはいかないけど。
これで二人がまた連絡を取り合う接点になったら嫌だなって思ったりする。


きっとずっと昔に落としたんだ。そうに違いない。

慌ててドアを閉めてロックのボタンを押したら、動揺し過ぎてキーケースを地面に落してしまった。


キーケースの中には、キーが四つぶら下がっていた。

自宅や実家、車と三つは推理できても残り一個の鍵が私の不安を更に掻き立てる。

二人は恋人同士では無かったと聞いているから私はそれを信じていたけれど、本当は――?

何で私に隠す必要はあったんだろうか。
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