自殺 ~飛べないカラス~
「分かったから……もう、やめてよ……」

「……」


 目の前の人物の瞳が、再びすっと細められる。

 その瞳は、(口から出まかせを。本当は分かっていないくせに)と言っているような気がした。

 事実、本当は質問の答えなど分かっていないので、そう思ってしまうだけなのかもしれないけれど。

 耳をふさぎ込み、しゃがみ込み、あからさまに相手を拒絶していると、目の前の人物はゆっくりと口を開いた。


「第5問。あなたは、飛べないカラスですか?」

「……っ!」


 弾かれるようにして顔を上げる。

 その質問の深いところに隠された本当の答えは、今すぐハッキリとは分からない。答えられない。

 けれど、確実に私の中の何かに触れ、自分の意思とは関係なく身体が……震える。


「……僕は、あなたがそこから飛び降りて死のうが、場所を変えて違うところで野垂れ死のうが、はたまた死ぬことをやめて生き続けようが、どうでもいい。

 これは紛れもないあなたの人生で、あなたがどう生きてどう死ぬのかはあなたが決めること。

 これは僕だけに限ったことではないけれど……あなたが決めたその人生に対してとやかく言うつもりはないし、そもそも言う権利がない」

「……っ」
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