オークション
手術をしてそんなに時間が経過しているとは思えないけれど、すでに立ち上がることも可能なようだ。


あたしは藤吉さんが術後すぐに絵を描いていたことを思い出した。


「この足はすぐに使えるんですか？」


「もちろんです。術後1時間も経過していないので今日は車で送らせてもらっていますが、今から歩いて帰ることだってできますよ」


「そんなに早く……？」


「そうです。オークションの購入者さんの中には才能を買ったと言う事実を伏せておきたい方もいます。


ですから、最新の技術を使い、すぐに私生活へ戻れるような手術方法を行っています」


男性はよどみなく説明する。


恐らく、本当の事を言っているようだ。


そして、ふと気が付いた。


今この男性はあたしを家まで送ってくれていると言った。


あたしの住所を知っているのはどうしてだろうか？


スモークが張られた窓の外を見ていると、確かに見慣れた景色がある。


「あの……」


質問しようとした時、男性が思い出したようにポケットからあたしのスマホを取り出した。


「これをお返しします」


「あ……はい」
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