オークション
高熱
立って歩くと体がぐらついた。


バランスを取るのが難しく、歩くのも困難だ。


こんな調子で大丈夫だろうかと不安になり、車の方へ振り向いた。


運転手の男性を目が合うと、男性はニッコリとほほ笑んで『大丈夫ですよ』と、口パクで言った。


オークションで購入した人はみんなこんな感じから始まるんだろうか?


あたしはそう思いながら玄関を開ける。


学校が終わってから4時間ほどしか経過していないことにも驚きだ。


リビングへ入ると夕食を終えたばかりだったらしく、両親が2人並んでテレビを見ていた。


「あらお帰り藍那。今日は遅かったね」


お母さんが振り返り、そう言う。


「う、うん。ちょっと寄り道してたから」


「遊んでばかりいたら成績が落ちるぞ」


お父さんがいつものようにしかめっ面をしてそう言う。


「えへへ。これから勉強するよ。あ、晩ご飯は食べて来たから」


あたしはそう言うと、急いで自分の部屋へと向かった。


両親はあたしの変化に何も気が付いていない様子だった。


大きく息を吐き出してベッドに座る。


そしてスカートをまくり上げた。


足の付け根に痛々しい手術の痕がしっかりと残っている。
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