オークション
☆☆☆

先生の笛の合図がけたたましく鳴り響いた。


その瞬間あたしは足を踏み出す。


他の生徒が少し遅れて走り出すのを尻目に、グンッとスピードを上げた。


大勢で走る時は一度前に出て、それからペースを整える。


でないと団子状態から抜け出せなくなるんだ。


少し差を付ければいいだけだったのだが、食後のやる気のない生徒たちの中だったので1人だけとびぬけてしまった。


ペースを落とそうとするのだが、それよりも走りたいという気持ちが大きくて足を緩めることができなかった。


後半から走るグループの子たちから歓声が沸き起こる。


「早い!」


「あんなに足早かったっけ?」


「すごいじゃん!」


そんな声があたしに向かって投げかけられているのがわかり、笑顔になった。
< 149 / 274 >

この作品をシェア

pagetop