オークション
みんながあたしを見ている。


あたしを見て拍手をしている。


それはとても心地よくて、できるならずっと聞いていたい言葉だった。


みんなの声援に乗せられて、あたしの足は更にスピードを上げていた。


気が付けばあたしの前に一番遅い生徒が走っていた。


あたしはその子を追い抜かす。


これで最後尾の集団とは一周差ができた。


「すごいわ、北川さん!」


先生が興奮気味にそう声をかけて来る。


あたしは先生の方を見てニコッとほほ笑んだ。


まだまだ余裕があった。


少し息が切れて汗が流れているけれど、足は軽い。


「藍那―!! がんばれー!!」


応援しているグループの中からエレナの声が聞こえてきて、あたしは振り向いた。


エレナが立ち上がり、大きく手を振っているのが見える。


あたしはエレナに大きく手を振り返した。
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