オークション
☆☆☆

そして、お別れ会当日。


放課後になり、あたしとエレナはクラスメートたちと一緒に藤吉さんの家に向かっていた。


当の藤吉さんはグループの先頭を歩いていて、今日はクラスメートのほぼ全員が参加しているようだった。


普通に引っ越す程度なら、ここまで大きな会が開かれることもなかっただろう。


才能を認められて海外へ留学する。


その立派な肩書が、ここまで人を動かす事になるのだ。


あたしは歩きながら時々ジャンプをしたりして足の感触を確かめた。


今日はマラソン大会へ向けての練習をする時間がないから、こうして少しの間の見計らって体を動かしているのだ。


「藍那、何かプレゼント用意した？」


エレナにそう聞かれてあたしは頷いた。


大したものは用意できなかったけれど、手ぶらで来れる会ではないことくらい、わかっていた。


「あたしも用意した。本当は嫌だったけど」


エレナがそう言い、べーっと舌を出して見せた。


その仕草に思わず笑ってしまう。


「もうすぐいなくなるんだから、気にすることないよ」


あたしはそう言い、エレナの手を握りしめて歩いたのだった。
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