オークション
でも、このメンバーで遊んだ事なんて1度もないし、何を話せばいいのかわからない。


黙々と片づけをしていると、不意に藤吉さんが口を開いた。


「この3人は知ってるから、会話をしても大丈夫だよ」


その言葉の意味を理解するまでに少し時間がかかった。


「やっぱりそうなんだ。最近急に走り出したから変だと思ってた」


委員長にそう言われ、あたしの思考回路は停止した。


言い返す事も、動く事もできずに委員長を見つめる。


「オークション」


委員長からその言葉を聞いた瞬間、拳銃で脳内を打ち抜かれたような衝撃が走った。


「なっ……」


驚きすぎて言葉も出ない。


ただ2人を交互に見つめるだけだった。


「あたしもあの会場に何度か行った事がある」


「委員長も……!?」


「そう。購入した事はないけどね」


委員長はそう言って、掃除をする手を止めた。


「残念ながら、あたしにはあなたたちのような勇気はなかった……」


「委員長は、なにがほしかったの?」


そう聞くと、委員長は「戸田啓太の脳味噌」と、躊躇なく返事をした。


あたしは戸田啓太さんがステージに上がっている時の事を思い出していた。


あの時、委員長もオークション会場にいたことになる。
< 167 / 274 >

この作品をシェア

pagetop