オークション
才能を買えばそんなものどうにでもなるんだから。


もちろん、そんな事口には出さずあたしは円滑な友達関係を築きあげていた。


「藍那おはよ」


「おはようエレナ」


教室に入って真っ先にエレナがそう言ってくるのは普段と変わりない日々が続いていた。


クラスメートたちはそれを合図にしたようにあたしに近づいてくるのだ。


エレナとの関係を邪魔しないようにしてくれているのがわかった。


人気者になると友達は増えて、異性から告白される回数も格段に増えていた。


「次の県のマラソンに参加するんだってね?」


エレナにそう言われ「どうして知ってるの?」と、聞きかえす。


「昨日スーパーで藍那のお母さんに偶然会って、話を聞いたんだ」


「そうなんだ。お母さんってばすぐにしゃべるんだから」


あたしはため息をつきてそう言った。


「あたし、正直安心してるんだ」


「え?」


あたしは首をかしげてエレナを見た。


「毎日のように藍那の事をテレビでやってるでしょ? なんだか、遠い存在になっちゃった様な気がして……」


そう言い、エレナは目を伏せた。
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